写生歌

かえって分かりにくくなった例

「白萩のベールが包む彼岸花燃ゆる赤さへたをやかに見ゆ」(紗柚) 根に毒を持ち真っ赤な色をした彼岸花は単独で見ると強烈な印象を与えますが白萩に覆われてぽつんと咲く姿は可憐でたおやかに見えました。 「死びと花」「根腐れ花」などども言われ、墓地で咲いているのがよく見掛けられるため、だけではなく、「根に毒を持つ」ので、あの華麗さにも拘わらず、彼岸花(別名は曼珠沙華)を嫌う人が多いのですね。一方で、古く「赤 […]

写生歌

「仁和寺の石畳打つにわか雨 小さき弧を描きしぶきに変わる」 (山紫水明さん2003/03/12) このような平凡な景色は題材として不向きなのでしょうか? 写生歌を作る度に、「ただ目にした風景を説明してるに過ぎない」という思いにいつも駆られます。この場面では降ってきた雨粒が跳ね返って、円弧を描きながらしぶきになって消えてゆくのを何とはなしに「きれいだな」と思ってみていた記憶から作ったものです。 写生 […]

写生歌

「川辺利に釣糸垂れて居眠りの父の魚篭には陽が射すばかり」(酔狂さん2002年7月10日) 改作(梧桐): 「釣糸を垂らして居眠りする父の耳洗ひつつ清流ひびく」(酔狂) あるいは、 「居眠りする父の釣糸風に揺れ小道具むなしく春の陽を吸ふ」(酔狂)

写生歌

「静かなる谿の夕暮れ山ざくら一きわ映えて緑に浮けり」(多朗さん2002年5月2日) 夕暮にしてなお、ひと際緑に映える山桜。そのあたりに夕日が当っているのでしょうね。そう思うと、奥行きのある写生歌、と気付きます。  この歌はこのままでいいですね。(強いて言いますと、文語歌ですから、「一きわ」は「一きは」です。また、結句は「浮かぶ」の方が据わりがいいでしょう。)

写生歌

「夜に舞ふ蝶といはむか蝙蝠の影の如くにむれて飛び交ふ」(桐子母さん2001年9月28日) いい主題ですが、描写がもう少しです。特に「影の如く」が効果的ではありません。何かの影の如く、なら分かりますが。この場面では、蝙蝠そのものが影なんですね。そのように詠むといいわけです。また、初句の「夜」も、昔なら暗黒を連想したのでしょうが、現代はそうと限りませんね。ネオンまたたく夜もあるわけですので。 添削・改 […]

やわらかさを出す

「一夏を咲き続けゐし百日紅秋空のもと青き実結ぶ」(すみえさん2001年9月28日) 庭に白色のさるすべりがほんとうに百日咲くように、ずっと咲いていました。歌を作るようになるまでは無頓着で、恥じいるばかりですが、一夏中咲いていることも気がつきませんでした。ただの写生ですが、自分が感動した事でしたので詠みました。 ははは。ただの写生ですか。単なる状況報告歌と活きた写生歌は違いますね。写生歌の場合、感動 […]

写生歌

短歌を始めて作ろうとすると、まず今日見てきた綺麗な景色やお花のことなどを歌にしたくなりますね。そんな写生歌の作歌のポイントは? 写生するにはそれなりの動機があるわけです。つまりその情景になんらかの理由で感動し、短歌の形にしてそれを読者に伝えたいという動機があるわけですから、動機の質と、短歌に詠みこむ時の工夫で、単に写生と見える短歌にも読者は十分感動を覚えるものです。それがかってのアララギの人たちが […]