4.推敲によって育て上げる

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清清しい

「小雨やみ伸びし雑草抜きおりぬ春草すがし匂ひの中で」(隆子さん2002/04/07) 文字通り清々しい歌です。「すがし匂ひ」は「すがしき匂ひ」でしょうね。その前に、「すがし」という形容詞、漢字では多分「清し」なのでしょうが、またおそらく「すがすがし」から来ていると思われますが、これは本来無い言葉です。つまり、「すがすがし」はあっても「すがし」は無いのですね。これも皆よく間違えます。例えば、例の有名 […]

一読してスムーズにいかないとき

「母恋て吾がゆびを吸う仔猫だきつ外の面の花ながめる夕べ」 (美雨さん2002年3月30日) 「だきつ」は「抱きつ」ですね。一読、このあたりがスムーズにいかない。こういう時は漢字表記がいいですよ。あるいは「いだく」を使うか。後半は、白秋の例の「ななきそなきそ」の歌を参照しましたね。 猫だって母が恋しい。ましてや・・・、の気分てしょうね。 添削: 「母恋ひて吾が指を吸ふ仔猫かな夕雨濡らす庭の花々」 ( […]

「ひよどり」「鵯」

「満開の眞白きこぶしひらひらと、ひよどりピクピク花びらを喰う」 (池内隆子さん2002年3月25日) 窓から眺めていると辛夷の上にとまり2羽たべていました。何時もならあまり気にしないのですが、やはり短歌を詠うようになり素雑な神経もじっと見ていました。宜しくお願いします。 ひよどり・・・漢字にしたいのですが・・・未熟…(-.-) 「眞白き」は「ま白き」、「真白き」。「ひよどり」は漢字なら「鵯」ですが […]

誤解を招く格好の例

「土手下にむれ咲く菜の花風に揺れ夕日を浴びて輝きませり」(ゆう子2002年3月18日) 結句「輝きませり」は「輝いていらっしゃいました」という意味だけれど、菜の花に対してはちょっと大袈裟では? 添削: 「土堤(どて)下に野生の菜の花咲きそろひ河風立つたび斜陽をはじく」 (ゆう子) (「野生」、「咲きそろひ」で菜の花の生命力を印象づけ、結句「弾く」がそれに呼応している。単に「風に揺れ」ではなく、「河 […]

色を印象づけるために、漢字を使う

「やわらかい雪をかぶれる萱原に稲妻のこし キセキレイ飛ぶ」(fumikoblueさん2002年1月7日) 殺伐とした冬景色(もっとも、ここでは雪化粧した萱原)でも、きらめくような美しい瞬間があることを、この歌は述べていますね。そこをうまく捉えられた。  歌や添え書きで言われる「稲妻(型)」というのは、鶺鴒の描く飛行曲線のことなのですね。少し解かり難いかな。また、キセキレイは、黄セキレイで、ここは色 […]

ポイントの語、文字から受ける印象

「靴おとが遠ざかりつつ雨音に重なり消えてまぁいいかって」(nanamiさん2001年10月30日) いいですねー。特に結句が出色。イメージを鮮明にするには、「廊下」という語がほしい・・・。(「おと」は漢字がいいですね、「音」。ポイントの語ですから。文字から受ける印象も大事です。) 添削・改作 「靴音が廊下にひびき遠ざかり雨に消えゆき・・まぁいいかって」(nanami) これは、さながら映画の一場面 […]

ポイントとなる動作を明瞭化するため

「同性にあくがれたことなどありませぬ 薙刀をもつ貴女を見るまで」(幸乃さん2001年10月24日) 「あくがれた」は「憧れた」で、「あこがれた」ですね。「吾焦がれた」というわけです。性的な意味はないのでしょうが、相手がサッチャーとかマリア・テレサとかオードリ・ヘップバーンとかではないので、なんとなく性的な匂いも感じてしまいます。そこがまたいいですね。よく詠めています。口語新仮名遣いで統一しましょう […]

視覚的にも美しい漢字

  「秋雨のまゝに暮れ行く庭隅に     しゅうめい菊のひともと明し」(幸乃さん2001年10月18日) 白花の秋明菊が群れて咲いているあたりだけ ぼうっと ほのかに明るくみえます。 「秋明菊」と漢字にしますと 「明」の字がふたつになるのでひらがなにしてみました ”白花の秋明菊が群れて咲いているあたりだけぼうっとほのかに明るく・・・”と添え書きにあり、歌では「ひともと」(一本)となっていますね。た […]

やわらかさを出す

「一夏を咲き続けゐし百日紅秋空のもと青き実結ぶ」(すみえさん2001年9月28日) 庭に白色のさるすべりがほんとうに百日咲くように、ずっと咲いていました。歌を作るようになるまでは無頓着で、恥じいるばかりですが、一夏中咲いていることも気がつきませんでした。ただの写生ですが、自分が感動した事でしたので詠みました。 ははは。ただの写生ですか。単なる状況報告歌と活きた写生歌は違いますね。写生歌の場合、感動 […]

推敲の仕方

「幾千の群れなす魚のうろこかな銀にかがやく海のさざなみ」(桐子さんお母様2001年9月23日) きれいな歌ですね。このままでもいいのですが、いま少し起伏をつけると、印象がさらに強くなります。(「幾千」と「群れなす」がちょっと重複しますね。幾千といえば、群をなすことでしょうから。「海の」も言わずもがな、かな。「魚のうろこ」だと、断定しているのも、ちょっと気になっています。比喩としての断定的表現がない […]

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