今日の6首
- 2004.07.31
新築の巨大モールの脇に建つスーパー何某(なにがし)たちまち潰る 台風の余波の雲塊つぎつぎと怪獣のごと飛ぶがに流 某大学OB会のメンバーに百六歳の元教授をり 某大学OB会のメンバーで米寿の御仁が一番元気 大学も苦難の時なれさまざまに締付けられて窒息しさう 酒を呑み愚痴をさんざん言ひ合ひて別れてのちに寂しさは来む
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
新築の巨大モールの脇に建つスーパー何某(なにがし)たちまち潰る 台風の余波の雲塊つぎつぎと怪獣のごと飛ぶがに流 某大学OB会のメンバーに百六歳の元教授をり 某大学OB会のメンバーで米寿の御仁が一番元気 大学も苦難の時なれさまざまに締付けられて窒息しさう 酒を呑み愚痴をさんざん言ひ合ひて別れてのちに寂しさは来む
真昼から夜半(やはん)にかけて蝉の声ここだひびけり生命(いのち)きらめく 死といふは特殊にあらず天地(あめつち)に生の数だけ散らばれるもの 無常とは無情にあらず生と死の変転あやつる仏の情なり イラクでは今でもむざむざ死んでゆく民ありそれが目的のごと
クーラーに冷ゆる部屋へもしみじみと蝉の鳴く声沁み透りくる
一歳の女(め)の孫自分のおしゃぶりを玩具のキリンに吸はせゐるぞよ ーーー いづくより湧きくる人らかぎしぎしと七夕飾りの下埋めて尽きず 祭とてアーケード街を埋め尽くす老若男女が今の人の世 人のため滅ぶ鳥獣樹木らよ我等群集もかく瀕死なり
貧しかる一本の木が幾百の小鳥をつつみ夕べ絶叫す 叫べるは樹木か群がる小鳥かも人間うごめく宵の街路に 人間に鳥ら追はれて塒(ねぐら)をば一街路樹に求め悲鳴あぐ ーーー プランターの一つが雀の砂場にて今日も浴びける跡二つ残る ーーー 一歳の女(め)の孫キリンの玩具引き七夕まつりの雑踏を縫ふ
街に住む小鳥ら夕方電線に連なりとまりそのまま夜へ 鳴き交はし離合集散せる鳥らを昼夜容(い)るるは街路の一樹 塒(ねぐら)とて群がる小鳥ら夜は樹の心拍音のごとく会話す 灯火(ともしび)に下照る一樹が幾百の鳥の臥所(ふしど)なり大音声立つ 数知れぬ小鳥ら宿る樹木立ち鼓動をしづめしんしんと眠る
今日、参議院選挙:- 政治とは最も疎遠な短歌といふ叙情に遊ぶ 開票進む中 イラクとか年金問題たたるとふ自民に厳しき開票すすむ なかなかに世の中変はること難し自民負けても政治は鈍く ーーーーー 屋上に建てたる物置無残にも突風に倒れ書物ずぶ濡れ 猛暑梅雨やうやく明けむとするならし列島縦断して北上迅し 空(くう)や空(くう)-無私とも執着なしとも言ふ小乗・大乗仏教もむなし 一歳の女孫のヌード撮り収め厦門 […]
見舞ひ来て病院固有の匂ひ嗅ぐわが行く末の園なるやこれ 幼な孫ひととせ生きて得し智恵に大人ら三人(みたり)を歓喜に誘ふ 夕迫り積乱雲さへ置かぬ空をねぐらに帰るカラス二三羽 白ムクゲ紫ムクゲ光(て)る夢路 果に《お歯ぐろ溝(どぶ)》とふ闇あり 一国を混乱の極に陥れそのままさらばと帝国のエゴ
『儲かるから武器商人になりたい』とアメリカ青年言へりとぞ聞く 金力と武力が世界を席捲せんこの勢ひをとどむるは何
夕焼:- 日を裹む黒雲しづかに朱を帯び来てやがてあかあかと街おほひ燃ゆ (「裹む」は「つつむ」) ーーー 夕映に小鳥の群がちぢみてはふくらみにつつ森へ消えゆく ーーー 玄関を這ひつつかがやく毛虫あり汝(なれ)よいかなる蝶へ化身せむ ーーー 貧窮に喘ぎ身を売る瀬戸際に才華咲かせし樋口一葉 身を削り生きむと必死に文を書く一葉なりき齢二十四