水害ほか
- 2011.09.06
東北の津波の悪夢さむる間もなく台風が水害起こす 八階の窓より俯瞰すつくづくと人は地面に張りつきて生く なだらかに養老山系つづくなり伊吹山(いぶき)の嶺を右方に置きて
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
東北の津波の悪夢さむる間もなく台風が水害起こす 八階の窓より俯瞰すつくづくと人は地面に張りつきて生く なだらかに養老山系つづくなり伊吹山(いぶき)の嶺を右方に置きて
またひとつ老舗の本屋が店を閉づすぢ雲うろこ雲さまよふ下にて 毬(いが)裂けて脳髄のごと栗の実が覗き見えきぬ秋の木ぞこれ 死者の影いくつも脳裏をよぎりゆくいづれも吾が知る笑顔を浮かべ
両岸にうすくれなゐの靄かけゐし桜の今は緑さんさん
歩みつつツクツクボウシの声聞けば裡なる宇宙もたちまち秋めく 木曽川は分岐するとき白々と泡立ち一つは急流となる 朝(あした)より夕づく刻まで雲ひとつなく晴れわたり秋の河朱(あか)し 遊歩道に未知なる花々咲きをればデジカメに撮る妻がしきりに 木陰道歩みて平和を味はふに頭上間近を自衛隊機過ぐ
「台風は遠退(とほぞ)きたれど木曽川に濁流渦巻き逆光にまぶし」 「河に沿ふ原生林が白鷺の繁殖地にて雛ら羽ばたく」
夕焼:- 日を裹む黒雲しづかに朱を帯び来てやがてあかあかと街おほひ燃ゆ (「裹む」は「つつむ」) ーーー 夕映に小鳥の群がちぢみてはふくらみにつつ森へ消えゆく ーーー 玄関を這ひつつかがやく毛虫あり汝(なれ)よいかなる蝶へ化身せむ ーーー 貧窮に喘ぎ身を売る瀬戸際に才華咲かせし樋口一葉 身を削り生きむと必死に文を書く一葉なりき齢二十四
「昼間見る半弦の月のはかなくてきらめく雲にいま呑まれゆく」 「軒先に頭をもたげ紫陽花のたわわに咲くは貴(あて)なる闇なり」 「梅雨明けと紛ふばかりの青空にヒバリあがりて生命(いのち)を謳(うた)ふ」 中里介山著<大菩薩峠>より:- 「盲(めし)ひてもなほ人を斬る竜之介-生くるとはかくすさまじきもの」 「モアレ縞さまざまなるを解かむとしその変幻はそぞろに妖し」
「河原よりひとつ雲雀の鳴きながら昇り果てしか声のみひびく」 「木曽川の中州に川鵜と青鷺と白鷺つどひ並びてありく」 「上げ雲雀撮らむとせしが眩しくて勘に頼れば空のみ写る」 「キラキラと上げ雲雀降らす春の声 身もだえにつつ喉(のみと)かがやく」 「頼みなるPC《Yuko Special(ユーコスペシァル)》も衰へ著(しる)し今日も唸れる」 「ある駅で上(のぼ)りなければ下り用エスカレータの横を昇りぬ」
「林行く風ひたひたと裏がへす葉叢なびきて白くかがやく」 木曽川増水:- 「青々と繁る樹木が濁流に半ば沈みてゆさゆさと揺る」 国宝犬山城:- 「徂徠命名の白帝城が激流の上の小山にぽつねんと建つ」
「雨風に桜の枝々左右(さう)上下かのもこのもに花うち振れる」 (「かのもこのも」は「彼の面此の面」で、「あちらこちら」の意味)