生活詠

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2004年9月4日

  • 2005.09.04

人間の浅ましき本性極まれり被災地ニューオリンズに略奪相継ぐ 近過去のはや茫々と立ち返る姫路も道後も別府の街も 白鷺の連理の比翼はばたけり姫路の城は時空を超えて 闇深く女人のすすり泣く声すもはら人間(じんかん)の情理を怨み はらわたを揺り動かしてかの調べ陰々とひびき埒も無かりし 大型の台風ゆらゆら海を這ひ不測不明がゆゑの厳しさ 易々と人の命の霧消してイラク北米アフガンを悼む 人の世の行く末暗示するや […]

2005年8月30日

  • 2005.08.30

吾子二人いち早く吾より去りゆきぬ父・子の絆の薄さ示して 汗匂ふ童が膝に来て愛し息子らを斯く抱きしことなく 子供らはスキンシップを求むるに息子ら胸に抱きし記憶なし 孫抱きて息子らしきりに想はるる雷雨来たりて闇駆け巡る ハイビスカスぽかりぱかりと咲かせたる大衆食堂の這入り親しも

2005年8月8日

  • 2005.08.08

路地裏を散策しつつ夜閉づる花多きことやや不満なり 路地裏を散策するに道幅をいっぱい占めて自動車が来る この庭に確かに真紅の花数輪昼間咲きゐき今はまぼろし 昼間見しハイビスカスの赤色は暗夜に合はぬと思ひつつ歩む 駅ビルの向かふにデパートあかあかと灯せる脇に繊き月浮く 「お地蔵はいつも微笑みおはすかな真闇の中にほのと明りて

2005年7月7日

  • 2005.07.07

商業地はビル乱立が当たりまえ低層住宅消えてなくなれ? (口語新仮名) 家裏にぐんぐん育つビルありて日毎視界が遮られゆく 南側ぎりぎりに建つビル工事ちゃくちゃく進みわれらもみくちゃ 小市民がビル建設に悩むときテロリズム激しくロンドン襲ふ ひとしきり夕空旋回してゐしが鴉族(あぞく)はビルの屋上に沈む

2005年5月10日

  • 2005.05.10

花どきの人らの狂乱しみじみとふところに秘む葉桜並木は 両岸の桜並木は緑々(あをあを)と風になびきて水を染めたり 公園にひしめき咲けるツツジらに桜若葉の緑(あを)反映す

2005年3月26日

  • 2005.03.26

3月の雪は殊さら富士山に降り積もりたり下まで白し ひた走る車窓より闇を凝視(みつ)むるに茫と浮かび来新雪の富士山(ふじ) 闇の富士山(ふじ)観ればたちまち胸内(むなうち)の腐肉のやうな我執消えゆく —————— 愛と憎、喜と悲、などなど対極なる情の近さを再(ま)た思ひ知る 浮薄にも見ゆるネットの奥底に疲れのたうつ人ら交錯す

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