日常は天動説
- 2011.04.24
姑息なる科学の危さ思ひ知る天動説にわれら生きゐて
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
姑息なる科学の危さ思ひ知る天動説にわれら生きゐて
数知れぬ雨の雫が灯に光る震災の地の涙いかばかりか 見の限り瓦礫ひろがる被災地に大戦末期の空襲かさなる 未曾有なる震災とは言へひと月経て不明者の数が万を越すとは
ひさびさに吊ししはなより鳴り止まぬ風鈴なりしが今朝は音無し
ソメイヨシノ 世界に幾本あるのだろうすべて一本のクローンと言うが (新仮名)
見のかぎり幾重にも花咲き満ちて熱しつつなほ犇めき合へり 澄み透る池に映れる岩影は水面(みなも)の波に微動だにせず 連鎖せりM9.0の地震(なゐ)により津波ならびに原発事故の 荒涼たる津波被害の爪痕も漏壷に時を刻む止むなく 襲はれし幾つ遺体を探り当て放置す放射能汚染つよくて
もともとは百ほどはある桜の種(しゅ)、今はソメイヨシノが跋扈す 終息に百年かかる原子炉事故せめて危機狼狽の早き収束を 危ふきかな直に原子炉の状態見ず推測のみに作業なしゐて
現地を見し人らいちやうに驚き言ふ震災は映像よりはるかにひどしと 日を追ひて新たな場所での漏れを告げ原発事故放射能汚染が広がる
たまさかに生(あ)れしのみなる人類に惨劇は何故(なぜ)くり返さるる 美女は美女、男(を)の子は男(を)の子であらまほし如何(いか)なる災難襲ひ来るとも
感情をもつと思へぬ雀にも恐怖心ありて敏速に逃ぐ おしなべて鳥獣と言へど恐怖心あるは生命(いのち)を愛ほしむゆゑ
屍を抱きこみ海に浮かぶ家の窓が夕陽に輝(て)るを幻視す 初動作業が遅れしゆゑか放射能洩れが日を追ひ深刻化する