影
- 2011.05.28
一様に自分の影を従へて老若男女が歩道をうろつく 肩ゆすり歩める誰(たれ)も時たてば自(し)が影はなれて逝くを知らぬげ
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
一様に自分の影を従へて老若男女が歩道をうろつく 肩ゆすり歩める誰(たれ)も時たてば自(し)が影はなれて逝くを知らぬげ
天災は分け隔てなしことごとく破壊し尽くせり校舎も墓も 天災は分け隔てなしことごとく殺(あや)め尽くせり子供も母も
梅雨入りが駆け足で来ると報らされて雨のありがたさをあへて思へる 夜の雨に鈍く光れる鬼瓦 無住の寺の闇の上なる
宇宙より還る絶叫の谺あり被災の修羅場を映像に見るに —————————————— 助動詞の<き、けり、たり、り、つ、ぬ>のすべてを「た」一つが引き受くるとは 生き様が単純化せしと思はねど<時>の感じ方は「た」にお任せにて
砂煙あぐる奔馬の勢ひに宇宙の闇を駆けぬけし夢 氷より熱く火より冷たかる熱情いづこ人は老いゆく それぞれの立場で釈明相継ぎて原発事故の迷走続く ここに来て原発推進を諦めぬ企業の論理は迷妄そのもの
チュンチュンチュンいじらしき音に子雀は命果つるまで鳴き続けんとや ひねもすを鳴ける雀の声変はる吾が戯(ざ)れの音(ね)に口笛吹けば とめどなく鳴きつづけゐる子雀にふと気付きけり母を恋ふかと —————————————– アメリカは疑 […]
無常観は古代ギリシャでPanta-rheiと既に明確に述べられてをり (ヘラクレイトス) 渇きたる頭蓋つらぬき蒼天の果へと消えゆく 風鈴の音は
生きて在るのみに泌み出(づ)るかなしみも神が気紛れに仕組みしものか 殺(あや)め合ふが人間の性(さが)と決めつけて軍なき世界は<理想>と言ひ捨つ
争ひて残飯ついばむ雀らに幼も交じりひときは騒がし 原子炉事故: 霧と消えし上空よりの放水に命じし首相の狼狽あらは 汚れあるウランを使ふ原子炉は原爆にはならぬと明言あるべき 被災地を戦場としてたち働く自衛隊員の真情知り得ず
ガラス戸に映る仲間に寄らんとし雀が内なるわれへ突進す (仲間、実は雀自身の像)