記録媒体
- 2013.01.09
録り溜めし大量のビデオ・テープいまは埃を被るわが過去として 変遷の激しき記録媒体に随(つ)いてはゆけぬと嘆かばおしまひ
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
録り溜めし大量のビデオ・テープいまは埃を被るわが過去として 変遷の激しき記録媒体に随(つ)いてはゆけぬと嘆かばおしまひ
年ごとに絶滅危惧種が増えてゆく人間とふ種(しゅ)は大丈夫だらうか 朝まだき路上に鴉らあふれゐて人界は黒に塗り潰さるる 冬薔薇の濃紫の挿花に露光り暗き仏間が底明かりする
直撃を覚悟したるに台風のまたもや逸れて拍子抜けせり 去りゆける台風のむた長月もわれすり抜けて消え果てんとす 台風の逸れしを幸ひ風鈴を吊せばしき鳴るよろこびの音に
聞き慣れしカネタタキの音(ね)なれど夜を徹し鳴くを惜しめり 「命縮むぞ」 異様なる明滅をなす星一つ西空に夜毎その位置を下ぐ
見るからに仲睦まじき夫婦鳩(めをとばと)をりをり我が家に来ては番へる 光(かげ)しるき月を横切る旅客機に人の数だけの頭蓋骨乗る この身成す数限りなき細胞のひとつひとつに意思あり宇宙あり
台風は遠方なるに風強く涼やかなるべき風鈴うるさし 遙かなる台風の余波に雨風がときをりどどっと建屋を揺るがす
厳しかる残暑のゆゑか寺の木に9月中旬にして油蝉鳴く 予報士が「猛烈」「猛烈」と繰り返す大型台風がじわりと沖縄へ 夢にあらず地球内部に無尽蔵の熱源が在る知恵絞り使へ
この十年を顧みるとき身辺にて生まれし命は死者数に足りぬ ここ数日明滅はげしき星あれば撮りて調ぶるに宇宙船かもしれず
真夜にしてツクツクボウシの鳴くなるは初めてのこと 昼は暑いか
たまさかに人に好かるる姿形ゆゑに犬・猫飼はる遠き時代より