夢にあらず
- 2012.09.15
厳しかる残暑のゆゑか寺の木に9月中旬にして油蝉鳴く 予報士が「猛烈」「猛烈」と繰り返す大型台風がじわりと沖縄へ 夢にあらず地球内部に無尽蔵の熱源が在る知恵絞り使へ
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
厳しかる残暑のゆゑか寺の木に9月中旬にして油蝉鳴く 予報士が「猛烈」「猛烈」と繰り返す大型台風がじわりと沖縄へ 夢にあらず地球内部に無尽蔵の熱源が在る知恵絞り使へ
この十年を顧みるとき身辺にて生まれし命は死者数に足りぬ ここ数日明滅はげしき星あれば撮りて調ぶるに宇宙船かもしれず
真夜にしてツクツクボウシの鳴くなるは初めてのこと 昼は暑いか
たまさかに人に好かるる姿形ゆゑに犬・猫飼はる遠き時代より
外(と)に出でて深く呼吸し青空を胸に吸ひ込めばこの身溶けゆく ガリガリと雲こするがの音立てて輸送機が航(ゆ)く墜ちねばよいが
いづれ来ん人の世の終りのありさまは徐々にかあるいは突然のことか 月捲りカレンダーの一枚を忘れず剥がしし今日をよしとす
地平を飛ぶ航空機の灯がビルに消えまた現るるを繰り返すなり
やむをえず衍字・衍文の多き資料読めば気だるし処暑の日なれど あっけなく高校野球も終りたるあとに澱めり夏の疲れの
あかあかと灯すマンションのビル壁に今を命とアブラゼミ鳴く
濃紺の空を海とし雲は島、夜間飛行の小舟の灯が航く 喧噪はオリンピックに高校野球、国際政治の混沌もまた 無と空(くう)に満ちたる般若心経を解釈なせそと言へらくや惜し