鬼岩公園
- 2012.04.07
まるまるとすべすべとせる岩のみが渓谷上方まで続く奇観なり 巨大なる岩群がれる隙間縫ひ春の谷水しぶきつつくだる ひびきあふ盤石不変の岩群と形象自在に流るる水と 壁なして組み合ふ巨岩のいくつかに垂直に斜めに亀裂が走る 大岩を厚らに覆ふ苔の色千年を経しと思ふばかりに
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
まるまるとすべすべとせる岩のみが渓谷上方まで続く奇観なり 巨大なる岩群がれる隙間縫ひ春の谷水しぶきつつくだる ひびきあふ盤石不変の岩群と形象自在に流るる水と 壁なして組み合ふ巨岩のいくつかに垂直に斜めに亀裂が走る 大岩を厚らに覆ふ苔の色千年を経しと思ふばかりに
広がれる瓦礫の海の底(そこひ)には幾千といふ屍(しかばね)眠るや 引き潮におし流されて海底に万余の屍(しかばね)凍えてをらん 人々に怯えもたらし放射能しみ出てひたひたと広がるらしも 映像に生きて笑へるこの女優は白血病で逝きて四半世紀 奇(くす)しくも9・11が忌日なり嘱望されし女優の夭折 中国の砂漠ロケにて被曝すとも。核実験のせいかもしれずと
木曽川越え長良川および揖斐川を左右に見つつ海へ急げり ひさびさに見る海なれば自づから視線は遠く水平線の先 海に臨む導流堤に釣り人ら春の日差に竿しならする 干潟より水鳥幾百一斉に飛び立ち再び干潟に鎮まる 汽水域なればちらほら白鷺も居りて折々つばさを打ちぬ 遙かなる河口の対岸にジェットコースター見えゐて妻も興味を示す
迫りつつ穂高雪嶺なみ打ちて高きは白照り深きは翳る
匂ひたち藤の房花いくすぢも長きが垂れて川面(かはも)に触れさう (小牧市清流亭) にょきにょきと似非円空仏の立つ街を初夏の陽浴びつつ妻と歩めり (羽島市竹鼻町) 藤棚の下に花の香こもるなか憂きこと忘れ人らくつろぐ (羽島市竹鼻町別院の藤)
例により婦唱夫随に出掛けきて予定調和のごと舟に乗る 街川を舟に下るに潜りゆく橋の裏側に水陽炎ゆらぐ 両岸は辛夷や桜が咲き満ちて震災忘却し舟すべりゆく 近くとも<水郷>の謂はれは知らざりし大垣の水路は城の堀なりき 日をかへし滾々と湧く清水あり杓に掬ひて呑めばうましも
水郷の安曇野(あづみの)に水車の回れるは黒沢映画<夢>のまぼろし 殉職者百十七人は想定の範囲内とぞ 黒部ダム建設に とどろきて噴き出づる水は怨念か観光放水と言へどすさまじ 黒部ダムの上より観れば縦に長き虹のかかりて消えてまた生(あ)る 船に航(ゆ)く黒部のダム湖は青澄みてしんと鎮まり生命(いのち)の影なし
上宝村合掌造りの里にて: 新緑と合掌造りとさくら花 生きて在る幸ここにきはまる
梅の里に花散り残り段段の梅林かすませ紅白ただよふ
梅雨近き山道ともに歩めればデジカメの写野にある妻の影 梅雨前の伊吹山(いぶき)山頂はすみずみまで緑に覆はれ瑞々しくて 山山の中なる伊吹山(いぶき)の尾根より見き起伏を舐めて移る雲の影 山頂の散策道を歩めるに涼風にそよぐ小花幾種(いくくさ)