ひたすらに美しきもののみを詠みゆかむ過去生のシミなど拭ひ取るべく
電線が多すぎるなどと嘆くまい 雀・椋鳥(むく)・鳩・鴉などとまりては鳴くよ
その寿命せいぜい百歳の人間が宇宙はいくつも在るなどと論ず
<イムジン河> 曲想にほれて唄ひこしがその歴史知れば涙さそはる
醒めながらやや目眩(めまひ)あり‘赤い雪’空こめて降る夢を見しのち
遠山の雪溶けたりと見つつゐて人らの春恋ふ息遣ひ聞く
「空しい」などと嘆くは生享けた人間の贅沢なたわごとである、とも思うこの頃
還暦を華甲とも言ふこと今に知るその故(ゆゑ)は思はざる理屈でありき
自殺・自死・自裁・自決と言ひ方もさまさま その数二万人超なり
ヒヨドリが奇声発して上下に飛び他の一羽とともに光に紛る