なにゆゑか雀の数がめつきり減り裏庭の木にさへ来なくなりたり
鋸(のこぎり)に縦引きと横引きの歯のあること知らず無作為に使ひこしかな
ずるずるずると過去へ引き込む唄流れ臍(ほぞ)のあたりが寂しく濡るる
悔やみけり死の床の弟が兄われに会ひたがりしと後(おく)れて聞きて
十幾年ぶり次姉に会ひしは妻とふたり病の見舞ひをせし時なりき
中学時代、卵焼きと梅干の弁当をまだ若き長姉がつくり呉れしかな
何カ月ぶりだろうこの朝の涼風は。写真に撮れるなら撮っておきたい
思へるは役所勤めの三兄が自慢せし‘速記術’今も使はれをるや
驚きぬ吾が生まれし日の‘曜日’をば機械が瞬時に答へたりけり
とうとつに島倉千代子の唄流れ「ああ次兄が好きだったなあ」とつい呟けり