固さ柔らかさ

炎天や他に音なき蝉時雨人目も草も静まり返りて(桐子さん2001年8月5日

「他に」は、一読で「たに」と読まれないように、「ほかに」とひらがなが良いですね。また「人目も・・静まりかえりて」はちょっと変です。人目を気にする、人目を憚る、などと言いますが、やはり音ではなく「目」が主体ですから。「他に音なき・・・静まりかえりて」も言葉が重複しています。短歌は字数が限られていますから、こうした無駄は極力避けねばなりません。ただ、詠まれたい状況は、たしかに短歌的世界で、その捉えどころはいいですね。もう少しですよ。(漢字の使用ですが、当てはまる漢字があるときは常に漢字化しなければならないことは全くありません。漢字ばかりでは印象が固くなるものです。適宜ひらがな表記を使うのも、柔らかさを生む効果があり、作歌技法の一つです。)添え書きの趣旨をなるべく生かしながら改作してみます。

添削・改作
「蝉しぐれ炎天の町にとどろけり圧(お)されて人界静まりかへる」(桐子)