クラゲ
- 2021.02.19
わづか四肢の絡まる思ひ時にあるクラゲの多く長き触手よ
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
わづか四肢の絡まる思ひ時にあるクラゲの多く長き触手よ
払暁を歩むに頭上の外灯が不意に消えたり明けを感知して
<獺祭(だつさい)> とふ酒を貰ひて妻と飲む馬場あき子氏の詠みゐし酒なり
千曲川氾濫の記事に去来せり藤村のこと妻と旅せし時のこと
罪深き事でも美しく詠むといふ短歌の宿命を嘆かざるべし 例歌:『沖縄の心埋めゆくトラックか 車列の前に青ざめる海』(野中暁)
白壁の茜に染まる一瞬を撮さむとして駆け出だしたり
恋歌の極みと思ふ‘新古今’の洗練されし心理詠をば
真上なる電線ゆ鴉が飛び立つとき翼の擦過音の妙に生々し
既にして寒は明けしにコロナ禍に人らの啓蟄はしばしおあづけ
『生れつきの‘悪’(わる)は居ない』と思ひこしがその信念の揺らぐこのごろ