冤罪
- 2009.06.04
梅雨近く紫陽花は色深めゆく青葉に毒をもつ気配消し 冤罪にて獄中生活十七年けふ釈放の人の思ひは
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
梅雨近く紫陽花は色深めゆく青葉に毒をもつ気配消し 冤罪にて獄中生活十七年けふ釈放の人の思ひは
子雀は羽根地にこすりねだりをりパン屑つひばむ母に寄りつつ 身の丈は違はぬわが子に口移しに餌(ゑ)を遣る雀 母なればこそ
海賊が一つの職となり果てしソマリアとふ国 世界はどうする? 稲ならず麻薬生産で食ひ繋ぐタリバーンといふ狂信の人ら 前大統領の自殺を報ずるテレビまた新聞見つつアスパラかじる 自殺するほどの苦悩の在る世には緑あふるる季節もあるなり 国のこと世界のことを憂ひつつ味噌汁すすり豆腐食みゐる
雀らが子育てをする軒先に猫出没す 民はどうなる 濃緑の葉陰にひそと柿の花ひらきて穏し 国もかくあれ
ツイツイと燕ら飛び交ひばたばたと雀らはばたく霧雨の中を 傘持たず出で来て歩むに降り初(そ)めし霧雨目に沁みむしろ快感
三月も下旬になりて雀たち追ひつ追はれつ元気に動く 寒もどり咲き初(そ)めし桜の縮(ちぢ)こまるを想へば深夜ひそかに匂ひ来
飼い犬は飼い主に似ると言うけれど犬と散歩の婦人に頷く (新仮名)
ビル陰に冬の暗さが残るのみ二月は実にあっけなく逝く
ベランダに出でて思はず語り掛く月なき夜空に浮かぶ孤雲に
白梅の大樹が花の盛りにて目白ら鵯(ひよ)ら雀ら乱舞す 田園を横切る高速道路の下、さらに向かふに伊吹山(いぶき)が吹雪く