朝朝に妙(たへ)なる音曲を流し呉るるこの電子装置は妻の気遣ひ
朝方(あさがた)は騒がしかりし蝉たちの昼間は静か眠りてをるや
昼よりの熱気残れる夕べにて西にあかあかと線状の雲の列
天上の曲流れつつまどろむにそを創る人間が今も殺し合ふ
ひらめきて金魚ら時に襲ひ合ふを至上の美とさへ観るは邪心か
意識の奥、そのまた奥の奥の奥、鈍く青白き命の影あり
半世紀余も前のことなれど訪ふたびに母は吾が消ゆるまで見送りましき
「モーツアルトはベートーヴェンとは大違ひなだらかに始まりなだらかに終る」(あおぎり)
大自然に比すれば余りに小さくて我らチマチマと生くそれも必死に
インドの人口ほぼ十四億三千万人、増加の速さにただ驚きてをり