久し振りに名古屋・栄を散策して以前にまさる賑はひにまぎる
朝まだき黐(もち)の木の青葉をゆらしつつ春風のやうな秋の風吹く
餌を置き身を隠してのち口笛で合図をすれば雀ら寄りくる
つれづれに入り来し小さな林にて鳥らのさへづりの多様さにおどろく
ある母の言葉に『幼児(おさなご)がとけたように寝てる』と。言い得て絶妙だ
立ち止まり「遠い未来」と聞きたるは「トロイメライ」のことでありたり
自問する彫心鏤骨(ちやうしんるこつ)と言へる仕事あるいは作品は我にありやと
しみじみと <乙女の祈り> を録(と)りゐるに低空を一機が轟音たてて
逆光に黒き翼をきらめかせカラスが視界を横切りゆけり
老いづきて日々平凡であることの物足りなさ否否ありがたきかな