六十六歳(ろくじふろく)で結婚、二児をもうけたる歌舞伎俳優の充実の生涯
驚きは耕作放棄地一割強。「もったいない」と誰かが叫ぶ
不意に湧く曲想いくつ。即座にも音符に移す能あらまほし
花冷えに桜の開花が遅るるに一足先にと芝桜咲(ゑ)む
姫役が今度は農婦の役こなし外見や職種の偏見を砕く
遠街も山も朦朧 空さへも霞のやうな雲に覆はる
この夕は日没早し西山を高く覆ひて雲の縁光る
たはむれに触るるピアノの鍵盤の冷えやはらぎて指よく動く
春を感じ発する言葉は新しく響けど年年おなじからまし
万葉歌に“多麻之比(たましひ)”とふ語を見てなぜか脳髄の襞(ひだ)が一瞬そよぐ