過去・現在・未来を三世(さんぜ)と二文字にて“時”わしづかみする仏語(ぶつご)の深遠
地震の文字を地獄と読みて狼狽(うろた)へぬ強(あなが)ち誤読にあらずとのちに
数株を妻が植ゑたる夏菫みるみる膨らみ今は押し合ふ
ブーゲンビリア薄べに花を並べしがはらりと一花散りて吾に寄る
カラス鳴くを皆は「カー」と言ふされど我「あー」とのみ聞くは耳あしきゆゑか
長雨のふと小止みなる間を縫うてクマゼミ終(つひ)の声を絞れり
大雨の降りつづくなか雀らも巣籠りに徹しひたすら我慢す
朝朝のクマゼミの合唱ぴたりと止む今朝降る雨はむしろ冷やか
百合の花 命の尽きてバサリ落ち人の骸(むくろ)のごと横たはる
風の荒れ部屋の中まで飛ばされ来し蝉の亡骸(なきがら)なにがな不穏