人間がオーケストレーションに目覚めし頃のクラシックにあらためて酔ひ痴れてをり
しつとりと春雨ふりて新築の瓦屋根をば黒々と濡らす
気付かずに近くを通り過ぎたるらし激しき羽音たて鵯(ひよ)飛び立ちぬ
思へらく大宇宙に在りて人間の意志などとふものはあまりに小さし
言ひてみて‘センテネリアン’こころよし。すこやかな人は皆そを目指す
わが国の宇宙技術がやうやくに月の面(おもて)に探査機を置きぬ
定時に遣る餌に寄りくるスズメらの数ふえてきてこの賑やかさ
感情の袋をしぼり絞りては泌み出(づ)る苦汁をいかにとかせむ
この街にしては大きな役所ビル、屋上角に赤き灯ともす
睡眠はなべての動物に必須なるもその本質はいまだ不明とぞ