梅原猛と瀬戸内寂聴の対談を午睡の床に聴きゐたりけり
夜を鳴き午前を鳴きゐし虫なるに夜となりまた鳴くに感心してをり
昼下がりさかんにヒーヨヒーヨと鳴きながらひよどりたちが遊ぶ日のあり
いつの日もサイレンの音がさかんにてケータイを向け写す癖つく
朝そうそう干しある布団をながめては隣家の平和をよろこんでいる
このごろは秋らしき気温と思へるに虫の音ははやおとろへにけり
なつかしき小公園に妻と聞く木々のざわめき鳥らのさへずり
世の事と全く関係なきヒッグス粒子とかにのめり込む人らを笑ふべきや敬ふべきや
明けゆくや胸の深部をなかしめてちちろちろちろ小鳥ら鳴くも
秋風にブラインドが揺れて音を立つその間(あひ)を縫ひ虫の音もれ来