雷光と怒濤のごとき豪雨の音ベランダに満ち思案を消し去る 政界の現状いかにと問はるればもうぐちゃぐちゃと言ふほかはなく

真夜中も公園に蝉の声満ちて照明灯に命まつはる しとどに降る雨は蝉らをおしつぶし今日よりおそらくその声絶えん

暗澹たる政治経済状況の劇的改新を誰しも願ふ 相ついで孫らが来てはじじばばを喜ばせるが時にはしんどい （新仮名）

七万本の高田の松原がただ一本残して津波に流され果てつ 七萬に一つは奇跡と言ふべくして津波に堪へし高田の一本松

尽くることなきもののごと音たてて水柱落つ蛇口ひねれば

ほど近き小公園に湧き立ちゐし熊蝉乱声けさより届かず

薄明に鳴き始めしは間違ひなく鳴き癖のあるかの雀ならん おそらくは近隣の雀らすべてだらう早朝小さき餌皿にむらがる 朝五時前あらそひ餌を食む雀らのけたたましかる声のあさまし

宗達の＜風神・雷神＞好きなれど和風を超ゆる自在さ気になる 風神のルーツ辿れば中国経てギリシャに至るを驚きとせず

ジャワジャワと鳴ける熊蝉の一つさへ見付けられずに木下をうろつく 姿なくさかんに鳴ける熊蝉らの下方で静かに待つ油蝉

クヮックヮックヮッ呼びかはしつつ闇を航（ゆ）く二羽の鴻（おほとり）翼の白し