たまさかに鏡に向けばありありと「生涯在鏡中」とふ詩句が浮かび
脳内につと溢れくる感情ありヒヨドリ一羽「チー」と叫びて
入神の業(わざ)といふことこの頃は自分に求むる思ひの強し
ジリジリと脳(なづき)の中を蟻が這ふその一つだに殺せぬ焦り
ひたすらに美しきもののみを詠みゆかむ過去生のシミなど拭ひ取るべく
醒めながらやや目眩(めまひ)あり‘赤い雪’空こめて降る夢を見しのち
「空しい」などと嘆くは生享けた人間の贅沢なたわごとである、とも思うこの頃
世の不条理憂ふ矢先に裏庭の樹木に椋鳥悲しげに鳴く
うづたかく積める手帳よ吾が過去の詰まりゐるゆゑ哀しげに見ゆ
とどろきは我が裡にあり空想の神と現実の神とがあらそふ