残れるはさまざまな記憶の骨格のみ。有無を言はせぬ「時」の作用よ
うれしいとか憎らしいとか悲しいとか人の心はありて無きなり
やんぬるかな我の係累ことごとく死にて逝きたり底なしの闇へ
さらさらとその末ほつれ乱れつつ小流れがゆく脳の山脈を
脳内に渦巻く思考の寂しさを星座の影と思ひゐたりき
止(とど)まらぬ時の流れに抗はむ意志に疲れてむなしかりけり
世のすべてあるべきやうにありてこそひとりの平安もあるべかりけり
われにとり‘心’はそのまま‘時’であり悲しきまでに掴めかねつも
自分が何故(なぜ)死なねばならぬか分らぬまま死にゆきし人も多しと思ふ
もつれ合ふ人界と大自然の間(あはひ)にて窒息しさうな至福はあるか