忘れ得ぬ米人の一言(ひとこと):知れ敗戦の民を奴隷にせざりし恩を
悔ゆることなどなき人生なれどさまざまに心にうつろふ細切れの過去
脳内にうづまく思考のさびしさを星座の影と思ひてゐたり
残れるはさまざまな記憶の骨格のみ有無を言はせぬ時の流れは
橋桁に水陽炎(みづかげろう)ゆらめく春の川、世は事もなしと言へるがごとし
ざざざざざ思考の河原がゆれうごく底なる石群(いしむら)紫に輝(て)る
ある記憶を辿りゐたるに深々と眠りたらしも 煉獄の夢
思ひ高め挑まんとする難問に五色の虹のかかりて解けず
あまりにも時間が速く過ぎてゆくあせる気持を抑へかねつも
想へるにかつて軋轢ありし人らも皆いまは亡しただ茫茫たり