漢字の使い方

天城路に木々の芽吹きの音聴こゆ、たゆとう光りに山動き出す」(宋見)
光りあふれ木々に芽吹きの音を聴く天城は浅き春にざわめく」(宋見)
2月末、天城峠を越えると伊豆の海からの光りが鮮やかに山を照らし、木々の芽吹きの音が聴こえてくるように感じます。冬の眠りから山が目覚めのときを迎え、風にざわめいています。浅春の天城越えの楽しさです。

天城山と聞けば国定忠治を、また天城越えと聞けば同名の演歌(唄・石川さゆり)を連想しますが、そういうことがなくても名所なのですね。添え書き自体が大変詩的になっています。なお、前に別のところで書きましたが、「光り」の「り」は不要です。「光りて」とか、連用形として使う場合は別ですが、ここでは「ひかり」という、完全に普通名詞化した語ですので。「芽吹き」の「き」も、旧仮名短歌なら不要です。新仮名短歌なら、この語はまだ十分には普通名詞化していないと思われますから、普通「き」を残しますね。「芽吹き」。こういう時だけ口語新仮名でも旧仮名を転用するところなど、面白いですね。新仮名では「芽吹く」の連用形は「芽吹い(て)」で、語尾は「き」ではなく「い」ですから。動詞の連用形を名詞化して使う際に、口語にも旧仮名遣いが残っていますね。)なお、「聴こゆ」ですが、「きこゆ」は自然に聞えてくることですね。そういう場合は「聴」の字は適当ではないでしょうね。これは注意して聴く場合に使われる漢字ですから。「見る」と「観る」の関係のような。二首目でも「きく」とありますが、やはり自然に聞えてくることをそう言われたものですから、「聴」よりは「聞」でしょう。
添削:
天城路に木々の芽吹の音聞こゆ たゆとう光に山動き初む」(宋見)
添削:
光あふれ木々の芽吹きの音を聞く天城は早き春にざわめく」(宋見)
二首目は、注意して芽吹きの音を聞かれたものとすれば・・・
添削?2:
陽を浴びつつ木々の芽吹の音を聴く天城はすでにざわめきて春」(宋見)