歌の焦点
久方に独逸語辞書を開きつつ
「シュレーエ」咲ける河岸を想ふ (幸乃さん2001/11/07)
「独逸」という表記がいかにも古風ですね。意識的?それとも、辞書の表題がこうなっているのかな。なるはど、「シュレーエ」では大抵の読者は解りません。何か花の名前だということは理解できますが。色、形、大きさ、背丈など、その花の属性が解らない。これらは作品の理解を助けるばかりではなく、作品に奥行きや色を添えることにもなりますから。
資料によると、ケルト人の制作になる、1年を13の月に分けて、「守護樹」を定めたツリーカレンダーがあり、スロー(シュレーエ)の月は 10/28-11/24 とあります。なるほど、今だ。また、別の本には「ドイツの春を一足早く彩るものに、アーモンドとシュレーエの花がある」とあります。
幸乃さんは、ドイツ滞在の経験があるのですね。
誤解を招きまして 大変申し訳御座いません。m(__)m ドイツ滞在の経験は御座いません。m(__)m
この歌、初句「久方に」が少々まずいです。普通、「久方の・・・」ですからね。「久々に」が適切ですね。「河岸」は「かわぎし」か、「かし」か。
添削:
「久々に独逸語辞書を繰りながら『シュレーエ』咲ける河岸想ひ出す」 (幸乃)
次の様では 如何でしょうか。
ドイツ語の授業受けし日々なつかしく
「シュレーエ」咲ける河岸を想ふ (幸乃)
ドイツの旅を詠んである ある歌のなかに 「シュレーエン」という言葉が
出て来ました。 白い花で 河岸に咲いている とあるのですが 何の花
なのかわからなかったので 視覚的にイメージ出来ませんでした。 それで
辞書を取り出して 調べてみました。久しぶりに 学生時代に少し学んだ
ドイツ語の辞書を手に取ったのです。そうした次第でした。
ははは。そういう事でしたか。つまり「シュレーエ」が何か、どんな花かを調べようとして、久しぶりにドイツ語辞書を開いた。その白い花が咲く河岸を思い浮かべながら・・・、ということですね。
幸乃さんの改作では、添え書きの内容の半分しか詠まれていないので、二首連作で改作します。
添削・改作:
「久々にドイツ語辞書を引きをれば学生時代がにはかに懐かし」 (幸乃)
「『シュレーエ』と呼ぶ花辞書に調べつつ白き花咲く河岸を恋ふ」 (幸乃)
内容が錯綜する時は、このように連作にするといいですよ。内容盛りだくさんの短歌は、焦点がボケて、よくありません。ただし、一首一首が十分短歌として成立するように詠むことが肝要です。