歌の焦点

「花白き林檎の枝に腕たかく伸ばす農婦に夕光(ゆふかげ)さしぬ」 (真理子さん2003/02/25
 歌ですが、ご自分では気に入っている情景とのことですが、林檎の白い花に一つの焦点があり、農婦が腕を高く伸ばす姿勢につい読者の視点が行き、もう一つの焦点となっています。さらに、その農婦の腕に夕光が差しているという、これも注意をひく光景で、つまり焦点が3つあるのですね。たった31シラブルの中で3つの主題を盛り込むこと自体よくないのでしょう。短歌は基本的には一事に焦点をあてて詠むのが要諦です。あとはその主題を活かすように配慮する。
 なお、雑誌『短歌』などに投稿した短歌が入選するか否かは、上手く詠うだけではだめで、歌材が重要ですね。審査員に目新しい視点なり情景を提供できるか否かが、投稿短歌の評価の半分以上を占めると言っていいでしょう。(もちろん、その上で詠みたい主題が浮き立つように詠うことです。)逆に目新しい主題なら、その目新しさが伝わるようなら、歌の作りが多少まずくても入選します。(もちろん、上手く詠むに越したことはありません。)年初の歌会始めで、作歌経験が浅い人の作品が間々入選するのは、歌材が共感できる新鮮さを持っているからと思われます。こればかりは、永年作歌しているかどうかには拘わらないのですね。作歌技術だけの問題ではないのです。とにかく、元歌の内容を壊さないように改作してみますから、参考にして下さい。
改作例:
「夕陽(せきやう)に花白く照る林檎樹へ農婦が腕を高く伸ばせる」 (真理子)

焦点をあてる

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