歌の焦点
「徘徊で車に跳ねられ逝きし君の墓標抱(いだ)きて喪章の揚げ羽舞う」 (迷倫さん2002/05/04)
短歌は字数制限がありますから、主に何を詠いたいか、を絞り込むことが必要です。それを前面に出して、あとはその主題が目立つような語句の斡旋をする。いいたい事を2つも3つも入れますと、焦点がボケて、読者に伝わる感動も、訴える力も弱くなります。この歌にもそれが見うけられますね。前半と後半で少なくとも二つの主題があるようです。
初句「徘徊」が単に「散歩」の意味なのか、ボケからくるそれなのか、前者なら省略してもいいし、後者ならそうはいかない、ということが先ずあります。たぶん、後者でしょう。お友達がボケによる徘徊で車にはねられた、これは一大事件ですね。また、喪章が揚げ羽のように墓標に舞う、というのも故人の何かを象徴しているのでしょう、これも詠いたい情景。
こういうときは無理せずに、二首で詠うのです。つまり二首連作ですね。もちろん、一首一首がそれぞれの主題を持った独立した短歌である必要があります。一首づつでも鑑賞に耐えるような歌である必要があります。