2006年5月18日
- 2006.05.18
銭湯の前をよぎるに湯の匂ひまとひて老女がぬっと出で来ぬ 扉(と)を開くカラオケ・バー前よぎるとき大音響の部屋内(へやぬち)空っぽ
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
銭湯の前をよぎるに湯の匂ひまとひて老女がぬっと出で来ぬ 扉(と)を開くカラオケ・バー前よぎるとき大音響の部屋内(へやぬち)空っぽ
噴き出づる水沫(みなわ)と見えて生垣に白き躑躅の花群ひしめく 生垣の根方に白き躑躅の花 椿ならねど首から落ちて
グランドの照明を背に大量の光はらめるメタセコイアら 少年ら照明の下グランドにサッカーボールを追ひ合ひてをり
花水木は萼にはあらず手触(たふ)るれば人肌のごとしっとりとして 飽きもせず未だに日々(にちにち)幾十人自爆テロにて死ぬイラクなり 自爆テロ記事に飽きたるメディアにて小さく報ず70人死亡と 外壁に沿ひくさぐさの薔薇咲かせこの小医院は心あらはす べっとりと墓地が血塗られ夜陰にあり垣一面の躑躅と知るまで
赤信号、車列の尾灯のともるとき闇の街路が血を噴くと覚ゆ
笑ひより嘆きが勝る人の世の黄砂に霞む三日月も星も
1ミリの線虫の遺伝子6割がひとと同じといふことの意味は 裏のビルに冬の太陽を奪はれしが入居者ゼロなぞ望みしや 否 通説に猿からヒトが出来しといふ今60億人その中の一人 60億の中の一人の気軽さにひと皆地球を踏みつけて生く
逍遥す花の季節を寿ぎて 桃花御衣黄その他もろもろ あでやかなるパチンコ店のネオンより鬼の悲鳴のごとき音たつ
白く照るチューリップの花の内にして小さき蜘蛛の巣を張るあはれ びっしりと紅芝桜の花敷くにひとつ白なる異端かなしき
散り急ぐ桜は遠見に赤さ増す萼の色とは知れどうれしき 咲くに遅速ありしが散るもさもあるべし塊をなし頑張る花あり 八分かた散りし桜ら一樹のみ白冴え冴えと咲き残りたる