シドニーに詠ふ－１： 「シドニーに着きし初日に市中にて＜三猿＞の像に逢ふ親しさよ」 「シドニーは肌色白と黄と黒と中間もある混合世界」 「初夏にして雨なき街に浮き雲が瑠璃色ガラスの空すべりゆく」 「歩くことこんなに愉快かシ […]

「 南半球に来しとふ感じわれになく同じ音調で赤子泣きをり」 「シドニーは処々に残れる英帝の遺物が文化の基底を支ふ」

「雲の上に青き空在り空の上に何があるのか知らぬが不安」 「死ぬために生きているのだ生の果に死が待つなどとゆめ思ふまじ」

「幾億年経ても錆びざる金剛の歌創らばや一生（ひとよ）に一首」 人皆が不老長寿で不死ならば世は太平の桃源郷か」

「奔る雲漏れつつ射せる陽のありて紅葉錦（もみぢにしき）の山肌を舐む」

「夜に入りて秋の名残の小糠雨身の外濡らし身の内濡らす」

「星空を西から東に糸引ける人工の雲照らす満月」 「夜空切る糸の雲ありさながらに銀河鉄道の吐く煙かな」

「新しき仕事成し得ず侘しくも過去の成果をほじくりかへす」 「四次元の時空の真洞へモミヂ葉が影をともなひ果しなく降る」

「秋の空かがやきゐたる東天に雲を染めつつ満月浮かぶ」 「満月がゆらめき歪んで見えるのは僕の五感が軟弱なゆえ」 －－－－－－－－－－－－－－－－－－－－ 「その郷（さと）が安全神話の日本なれば娘（こ）は上海でカバン盗られき […]

口語新仮名の歌４首： 「薄明の宇宙の果に聞こえつつ＜七つの子＞の歌、鴉のわらい」 「死ぬ瞬間僕らは何を見るのだろう。血の海なのか、ただ暗黒か」 「『死にたくない！』目開き臨終（いまわ）に叫んだ兄、あの目は何を見ていたのだ […]