しみじみと <乙女の祈り> を録(と)りゐるに低空を一機が轟音たてて
逆光に黒き翼をきらめかせカラスが視界を横切りゆけり
老いづきて日々平凡であることの物足りなさ否否ありがたきかな
空覆ふ雲海の一隅に奇蹟のごとひとひら小さく青空のぞく
ネモフィラの和名は瑠璃唐草と聞きて親しささらに深まる
梅原猛と瀬戸内寂聴の対談を午睡の床に聴きゐたりけり
夜を鳴き午前を鳴きゐし虫なるに夜となりまた鳴くに感心してをり
昼下がりさかんにヒーヨヒーヨと鳴きながらひよどりたちが遊ぶ日のあり
いつの日もサイレンの音がさかんにてケータイを向け写す癖つく
朝そうそう干しある布団をながめては隣家の平和をよろこんでいる