ばりばりと木造家屋を壊しゆくブルドーザーなり埃けたてて

（非定型）： 「あらまほし桃源郷またはユートピア、華胥（かしょ）の国、常世の国、無何有の郷（むかうのさと）、仙郷、パラダイス、などとも言ふが」

乱数表に８が四つ並ぶ箇所あるを見つけたり奇跡のごとし （乱数表：0～9をまったく無秩序に無数に並べた表。ある数式を使って機械的に生成される。）

たびたびもサイレンの鳴る朝（あした）なり救急車、消防車、パトカーといそがし

裏の隣家の改築はじまり警戒して日頃くる雀らベランダに来ず

とうとうと流るる調べの末にして消（け）ぬがに震ふる弦のトレモロ

「もとづく」は「基づく」と書くが元々は「本づく」とするのが普通なのだと

花水木のあまたつぶら実が緑から赤へと変はりゆくにひと月ばかり

夜の明けより蒼さ極まる秋の空、その下に住む数なき命

はげしくも変化し続くる雲模様、空も秋へと急ぎゐるなり