不器用に雀ら飛ぶ中すぢ引きて目の前よぎりし初燕うれし デジカメにて太陽をもろに撮りたれば暗黒に浮く白球写る 肝据ゑて太陽をまともに観てをればこの身たちまち融けゆくごとし

尼寺の屋根に屯（たむろ）する鴉らを脅せばバタバタと飛び立つ・・夢か 幾重にも盛り上がりたる桜花（はな）やがて滝なし散り込む寝覚めの夢に

世にひとつの樹種とも言へる中将姫誓願桜を拝（をろが）み写す 花びらは三十弁とも。中将姫誓願桜は繊細清楚 －－－－－－－－－－ 門前のハナミズキはや咲き始むほかはせいぜい稚拙に蕾むに 咲き始め白緑模様が漂ひて花水木の樹体を […]

ベランダより見ゆるわづかな星の中ちかごろ金星が異様に明（あか）し 金星を米軍機ぞと勘違ひし急降下せし旅客機ありきと －－－－－－－－－－－－－ 一撃で力道山に惨敗せしは史上最強の柔道家なりき ショーなりと油断し木村政彦は […]

世を覆ふ空の濁りをうち払ひ桜花（はな）が彼方まで川沿ひに雪崩る 重なりて桜の枝間を敷き詰むる花びら散らし鵯（ひよ）ら行き来す

相継ぎて隣人逝きぬ低温の害およびしは花のみならで

ゆきやなぎ店先に咲くを見届けず八百屋の主（あるじ）は逝きてしまへり

生（あ）れざるは滅せざる否、生（あ）れもせず滅しもせずとぞ「不生不滅」は

街川も海へ続くを確かめんと行きつ戻りつ妻は振り回す やうやくに着きしは藤前干潟にて鳥群るる果に外洋ひろがる

広がれる瓦礫の海の底（そこひ）には幾千といふ屍（しかばね）眠るや 引き潮におし流されて海底に万余の屍（しかばね）凍えてをらん 人々に怯えもたらし放射能しみ出てひたひたと広がるらしも 映像に生きて笑へるこの女優は白血病で逝 […]