ある短歌(うた)に「涙がポロポロあふれたの、まるで数珠(じゅず)をちぎったように」と
叫びつつ野鳥の幾羽が乱れ飛ぶ雲が白蛇のごとく動きて
じわじわと雨の運気が圧し下げて耐へられぬのかやがて降り始む
野生とはかなしきものよ日々にして餌やれどスズメらとんと懐(なつ)かぬ
しらじらと全天かがやく時の間(ま)あり均一に雲の薄膜張りて
天空にも死がある、流星は星の死と詠むあり なるほど 空澄まば見む
破落戸(ごろつき)とか「麾(さしまね)く」とか「紙縒(こより)」とか使ひ慣れざる漢字も多し
降り続きし雨止みてしばらく経てのちに西空があかあかと焼けて夕づく
裏の木にスズメら騒ぐたはむれに口笛で和せば一層さわぐ
人生で世に言ふ働き盛りの時期がざつくり記憶から抜け落ちてゐる