身辺に例年になく熊蝉の多く鳴くなりそれはそれでうれし
“認知症”は“不認知症”にて自覚症状なきゆゑ誰もが不安を持てり
驚けり鴇色(ときいろ)染色に桜木の枝の煮汁を使ふと聞きて
隆隆と立ち上がるセイダカアワダチソウ寺の門前ゆゑ畏れて切られず
あるときは忘れしことを忘れゐてただ茫茫と未来は見えず
雲塊がいくつもぷかりぷかり浮く一つでもいい煌めきてあれ
熊蝉の鳴く中いっしんに写真撮る声も一緒にとれればいいが
小さかる裏庭の木に熊蝉の来鳴くは極めて珍しうれし
生命に“神意”の無くばかくほどの精神の高揚は無かりし思ふ
偶然いな必然の成しし“生命”とふ無上の喜悦と悲哀のドラマ