降りゐるとも見えざりしかど春の雨 甍が銀色(ぎん)に輝(て)るを見て知る
ラジオにて女優が「雪国」を朗読すドラマに観る彼女と別人の声に
欅はたメタセコイアらけぶるがに若葉噴きゐて吾も変若ち返る (変若ち返る(をちかへる)は「若返る」の意)
「令和」といふ墨書いづれも「令」の字の縦棒の処理に困つてをるなり
朝ごとに懐中時計のネジを捲くもとより頭のネジも捲くなり
鬼を追ふ夢のさ中にとどろきて脳の芯部を春暁雷打つ 桜早よ咲けとや暁闇を長々と走る雷鳴に驚き目覚む
『人はみな自分の辞書持ち生まれ来る』小耳に挟みしが妙に気になる
昼と夜の気温差10度を超ゆる日は空の景色も人模様も不如意
川沿ひに散策してゐて獺(かはうそ)に会ひしことあり獺祭魚(だっさいぎょ)は見ずに
身のまわりに多くの時計を置く生活 見るというより見られているも