涼しさに慣れ始めしころ何といふ意地悪天気か暑さが戻る
鳴き声を真似て猫と声競ひ「どちらが猫に近いか」と男
建物の間(あはひ)に秋の日は落ちゆく視野の狭さを克服すべし
髭は伸び爪も伸ぶるは生きてをる証なれども メンドクサイ!
秋の夜に立つは虫の音のみならず野獣に紛ふカラスらの声
裏庭の梢のシルエットそよぎゐてビルのした闇に虫の音しきり
迷ひなく音たてギンナン落ちつげりがつちり受け止むる大地あればこそ
キーン、キーン ガラスが蛇口に当たる音の胸に突き刺さる 生き返るべし
昼夜とほし一定リズムと音色(ねいろ)にて鳴く虫が居る あと幾日もつか
絶え間なく西より工事の音聞こえ現場は其方(そなた)と思へば東なり