「光岳」は「ひかりだけ」ならず「てかりだけ」と。その頂に白き巨岩ありて」
花柄のワンピース一着部屋干しされ包まむ肉体を恋ふ風情なり
般若心経走り書きして読めざれど文字たどるがに大声にて唱ふ
カラス鳴くを皆は「カー」と言ふされど我「あー」とのみ聞くは耳あしきゆゑか
長雨のふと小止みなる間を縫うてクマゼミ終(つひ)の声を絞れり
大雨の降りつづくなか雀らも巣籠りに徹しひたすら我慢す
朝朝のクマゼミの合唱ぴたりと止む今朝降る雨はむしろ冷やか
風の荒れ部屋の中まで飛ばされ来し蝉の亡骸(なきがら)なにがな不穏
ひたすらにクマゼミら鳴く音韻を朝朝あびて俗身洗ふ
ただ一つの受精卵よりあやまたず双子は同じ容貌と成る