金色(こんじき)から茜に変はる西空へ鴉の群が叫びつつ去る
篠田桃紅氏、百七歳にて大往生 書(しょ)また美術の遺産ありがたし
雀減りカラスはどんどん増えてゆく高知能ゆゑ末おそろしも
古書にある神話がすべて創作なら作者は驚異の才の持ち
払暁を歩むに頭上の外灯が不意に消えたり明けを感知して
<獺祭(だつさい)> とふ酒を貰ひて妻と飲む馬場あき子氏の詠みゐし酒なり
千曲川氾濫の記事に去来せり藤村のこと妻と旅せし時のこと
白壁の茜に染まる一瞬を撮さむとして駆け出だしたり
真上なる電線ゆ鴉が飛び立つとき翼の擦過音の妙に生々し
既にして寒は明けしにコロナ禍に人らの啓蟄はしばしおあづけ