虫とは言へ記憶はたしか毎朝をたがはずここの叢(くさむら)に鳴く
すがすがし吾に来る郵便物は激減す。大方は妻と娘へのもの
そよ風にBGMのゆらぐさへ心波立つこともあるなり
台風の余波の風吹く裏庭にちちろちちろとこほろぎ鳴くも
仕事上よく知る人の訃報をば会誌にて知りしづかに合掌
いつよりか裏庭に虫ら鳴き交はし涼風とともに「もう秋ですよ」
ふる里の家には甥が一人住みいつしか荒れて雑草繁茂す
蝉絶えし朝の散策たかだかとこほろぎ鳴けり常のくさむらに
今朝にして気付くは迂闊遠近のクマゼミの声いつしか絶えぬ
全世界に普及のインターネットはまたアウターネットでもあると思へり