大雨の降りつづくなか雀らも巣籠りに徹しひたすら我慢す
朝朝のクマゼミの合唱ぴたりと止む今朝降る雨はむしろ冷やか
風の荒れ部屋の中まで飛ばされ来し蝉の亡骸(なきがら)なにがな不穏
ひたすらにクマゼミら鳴く音韻を朝朝あびて俗身洗ふ
ただ一つの受精卵よりあやまたず双子は同じ容貌と成る
扇風機のまへ通るとき風感ず しばらく前より止まりてゐるに
浅田真央と藤田真央ゐておもしろし女性スケーターと男性ピアニストなり
身辺に例年になく熊蝉の多く鳴くなりそれはそれでうれし
驚けり鴇色(ときいろ)染色に桜木の枝の煮汁を使ふと聞きて
あるときは忘れしことを忘れゐてただ茫茫と未来は見えず