声掛くれば易々とフィッシャー・ディスカウを聴かせ呉るる器機に負ひ目を感ず
地蔵堂すぎてしばらく朱塗りなる神の祠(ほこら)がビル脇にある
しばらくは数減りゐたれどスズメ子らふたたびわんさと餌にむらがる
スカートめくれ両脚あらわに女高生ら寒き朝(あした)を自転車登校
もこもこの庭木の葉叢(はむら)にぽこぽこと顔を出し入れあまたのスズメ
停止せる車群を縫ひて唸りつつパトカー走る救急車走る
「たけくらべ」その肉筆の原稿から樋口一葉の息遣ひ感ず
1尺と1フートがなんとほぼ同じ偶然といふもの世にあるものなり
雨樋の縁(へり)に数羽の雀ならび一羽が鳴けばみな鳴き始む
雨後の朝外(と)に出で浴ぶる秋風の冷えに想へり王朝びとを