高校まで住みし故郷の町を訪ひあまりの変化にうろたへにけり
(新仮名): 写真見て「このおじいさん誰?」と問えば呆れつつ妻は「あなたでしょ!」と
けふ4月2日(しがつふつか)にして地平から入道雲湧く真夏のごとし
歩みつつ民家の木立のいづくより聞こえくるのかウグイスの笹鳴き
桜満開にならむとする朝花冷えに冬期のやうに重ね着をする
(新仮名): 車すべてを停止させる救急車それをさえ停止させる踏切は正に王者だ
(新仮名): 食うこととおしゃべりする以外やることのないスズメたち餌場(えさば)にたかる
春霞かからずくつきりと山脈見ゆ昨夜(よべ)の降雨に感謝すべしや
六十年余前なれど忘れず死にし級友の母言ひし言葉「生命力が弱かったから」
薄衣(うすぎぬ)を灯にすかす折のモアレ・パターン美しければしばし見惚(みと)れぬ