朝方(あさがた)は騒がしかりし蝉たちの昼間は静か眠りてをるや
ひらめきて金魚ら時に襲ひ合ふを至上の美とさへ観るは邪心か
半世紀余も前のことなれど訪ふたびに母は吾が消ゆるまで見送りましき
雷鳴にドアがガタガタと共振す雷(いかづち)が震はす空気の厚み
鳩一羽腰振り前をあゆみゆくまるで過日の鴉のやうに
断末魔。日航ジャンボ・ジェット機の墜落時、機長の「がんばれ、がんばれ」は
新聞をたたむに折れ目が運悪く写真の美人の顔を真二つ
雀らの餌場がせまく木の枝にたくさんが待つ先客多くて
体ぢゆうねばつく感じああこれが梅雨の最中(もなか)の特徴なのだ
寝覚めつつ宇宙の果より聞こえくる超高音のささめきありき