八十歳半ばの脳髄を生かすのはその尖端にふるへるトレモロ
ふと思ふ赤子の泣き声は日本人も外国人も同じだらうか
雷雲が頭上にとどまりながながと光りとどろき市民を威す
メスとオスで鳴き方が違ふとふホトトギスこの耳でしかと聴きたきものぞ
鳩ならずまして鴉ならぬ鳥一羽 思ひつかぬままに飛び去りしあり
餌時刻に集まる雀ら吾が出れば一時避難す隣の屋根へ
朝朝をはげしく鳴きゐし蝉たちの声はや激減す八月なかばで
名曲の録音をする、庭の木にスズメら騒ぐ声もろともに
「さるほどに」の声に応ぜむと腰うかせテレビとわかり苦笑して座す
庭に来て餌をねだれる小鳥らのさへずりにさへ心ふるはす