不器用に雀ら飛ぶ中すぢ引きて目の前よぎりし初燕うれし デジカメにて太陽をもろに撮りたれば暗黒に浮く白球写る 肝据ゑて太陽をまともに観てをればこの身たちまち融けゆくごとし

尼寺の屋根に屯（たむろ）する鴉らを脅せばバタバタと飛び立つ・・夢か 幾重にも盛り上がりたる桜花（はな）やがて滝なし散り込む寝覚めの夢に

ベランダより見ゆるわづかな星の中ちかごろ金星が異様に明（あか）し 金星を米軍機ぞと勘違ひし急降下せし旅客機ありきと －－－－－－－－－－－－－ 一撃で力道山に惨敗せしは史上最強の柔道家なりき ショーなりと油断し木村政彦は […]

相継ぎて隣人逝きぬ低温の害およびしは花のみならで

ゆきやなぎ店先に咲くを見届けず八百屋の主（あるじ）は逝きてしまへり

街川も海へ続くを確かめんと行きつ戻りつ妻は振り回す やうやくに着きしは藤前干潟にて鳥群るる果に外洋ひろがる

広がれる瓦礫の海の底（そこひ）には幾千といふ屍（しかばね）眠るや 引き潮におし流されて海底に万余の屍（しかばね）凍えてをらん 人々に怯えもたらし放射能しみ出てひたひたと広がるらしも 映像に生きて笑へるこの女優は白血病で逝 […]

この景色どこかで見たな、ああ墓地だ。ある大都会の広角写真に （口語新仮名）

三重の災害受けしこの国を穢土とや言はむ浄土とや言はむ

荒寥たる更地に生ひ立ち自らの意志もて育ちゆくビルの骨