暁闇(あけやみ)に花水木の花ばうと浮き際(きは)やかな白になりゆく早し
階上より見下ろせば白の眩暈なり花水木の花は上向きにひらく
「今春は桜の開花がいと早し京都では千二百年ぶりの早咲きといふ」(あおぎり)
路地裏に芳香みちゐし沈丁花けさは見事に散り果ててをり
去年(こぞ)植ゑし紫陽花の苗木が冬を越しはつかに新芽を出(い)だすうれしさ
極寒にもめげず咲きつぐ石蕗(つはぶき)の緑の丸き葉の慕はしさ
細枝の先端に残る紅葉(もみぢ)二枚 深まる冬に落ちさうなものを
おほかたの葉は落ちたりし花水木 朝の陽を透き寂しげに立つ
ちぢれたる葉に乗る形に花水木の代(よ)を繋がむ朱実ここだ輝く
秋の雨つよくなりゆき金木犀の花みな散らして朱の淵つくる