滔々ととうとうと流るる‘時の川’溺れまいとて懸命に泳ぐ
人類もいづれは滅する思へればその旺(さか)んなる今に在る幸よ
世に無明はびこる現実を悲しめど吾が裡にもあるをつとに寂しむ
幻聴: 轟きて宇宙の果に鳴る神のあとに続ける声のか細さ
わづか四肢の絡まる思ひ時にあるクラゲの多く長き触手よ
『生れつきの‘悪’(わる)は居ない』と思ひこしがその信念の揺らぐこのごろ
ゆゑ知らず朦朧とせる時の間を振り払はむとして空しさ波なす
唐突に或る思念過ぐそののちは人間世界の悲しさの満つ
眺めゐる壁にゆがむ顔など浮き出でてパレイドリア効果の謎を思へる
夢ならば千里の里も昔日も目前(まさか)に現る これぞタイムスリップ