わぁーこれがフィッシャーディスカウの歌声だ!潤んで張りあり朗朗と流れ
美しき曲が工事の騒音と重なりにつつ別の曲になる
とうとうと流るる調べの末にして消(け)ぬがに震ふる弦のトレモロ
軽やかでリズミカルな曲が部屋に満ち脳髄の襞(ひだ)をほぐしてしまふ
不思議なりベートーヴェン以降二百年経つに匹敵する作曲者は出ざる
「エリーゼのために」のあとに「運命」聴く。とても同じ人の作曲と思へず
朝鮮の南北分裂の悲劇負ふ曲「イムジン河」を弾くわれ日本人
日本の民謡集を聴きゐるにいづれにも奥底に悲哀ゆらめく
シューベルトの楽曲つぎつぎ流るるに「ああこの曲もシューベルトか」と気付くことあり
「モーツアルトはベートーヴェンとは大違ひなだらかに始まりなだらかに終る」(あおぎり)