推敲の仕方

「「つづれさせ」蟋蟀は鳴くと祖母言ひし時代(とき)は移りて世は使い捨て」 (桐子さん2002年9月10日
祖母に聞いたことがあります。蟋蟀は「褸刺せよ 褸刺せよ」と鳴くのだと つまり「寒くなってきたからそろそろ着物の綻びを繕いなさい」と教えているのだと。でも ものが溢れている今の時代では 簡単に捨ててしまい 昔のように継ぎを当ててまで着るという事がほとんどありません。
初句は漢字のほうが分かり易いでしょうか

この話、以前どこかで聞いたような気がします。いい歌材ですね。初句は実際の発語「つづれさせよ」がいいでしょう。(字余りを気にして「つづれさせ」で止めたのでしょうが。)この句が生命の歌ですからね。ただ、読者には何のことか分かりません。()で漢字を書く(逆ルビになりますが)か、注の形で漢字を示す必要があります。そして、その意味するところを、ここでの添え書きのように説明されるといいですね。特殊語についてはよく注釈を付しますので。
 さて歌ですが、「時代(とき)は移りて世は」はいかにも散文的でまた常套的ですね。こういうところに表現上の工夫がほしいのです。(つまり、作歌が安易だととられるのです。日常的によく使われる語を使っておけば作歌が楽ですからね。しかし、それでは訴える力が弱くなってしまうのです。折角初句のような斬新な響きの語を使いながら、惜しいのです。)さらに、「言ひし」は連体形ですから、次に名詞が来るとそれに係るものととられてしまいます。「言ひし時代・・」たぶん、ここで一旦切れるのでしょうから、「言ひき」と終止形にするのがいいです。(語法としての連体形止めはありますが。)
添削
「祖母かって『つづれさせよ(褸刺せよ)』と蟋蟀の鳴く音(ね)を言ひき 今使ひ捨て」 (桐子)